2)「必要最低限な力」とは
「必要最低限な力」
「必要最低限の力」を適用することが、私が考える理想的な手術手技の基本です。しかし、物を操作する上での「必要最低限の力」は、言葉としては簡単ですが、実際にそれを実践することが非常に難しいです。世の中には、ほぼ無意識にこの能力を発揮できている先生もいます。これらの先生は、通常、器用であり、上手と評価されます。しかし、大多数の先生は、この概念について認識できず、また、それをそのやり方も分からないのが現状ではないでしょうか。
手術手技における「必要最低限の力」を会得するためには、以下の2つの要素が重要だと考えます。
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「必要最低限の力」を認識する能力
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「必要最低限の力」を適用・実践する能力「必要最低限の力」を認識する能力
「必要最低限の力」を認識する能力
まず、「必要最低限の力」を認識する能力について詳しく説明します。
手術中に以下のような状況に遭遇したことはありませんか?
・肩に力が入っている
・手首が硬い
・手が震える
・組織を攝子でうまく摘まみ上げられない
・術野に頭が近くなる
・手術が終わったら肩がガチガチ、腰もガチガチ
実はこれらの状況は、体に無理や無駄な力が入っていることを示しています。緊張からくる力みは、体の動きを不自然にし、細かく繊細な操作を難しくします。このような無理・無駄な力が入っている状態では、「必要最低限の力」を正確に認識することは難しいです。この力を抜く作業を「脱力」と私は呼んでいます。
この「脱力」こそが、「必要最低限の力」を認識するための必要なスキルです。