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1)理想的な手術手技とは?

理想的な手術手技

手術手技を修得する前に、前提としたいことがあります。それは外科医が必要とされる手術手技の理想形とは何か?という話です。

理想的な手術手技はどんなものでしょうか? 滞りなく、停滞しない手術? 鮮やかな手術? 正確・精密な手術? いずれも必要であるとは考えますが、私が重要と教わってきたことはAtraumatic(愛護的)に組織を操作し無駄な副損傷(コラテラルダメージ)を抑えることでした。組織を愛護的に操作するとは、理想的には組織の切開、剥離、牽引に必要最低限の力しか使用しない。無駄に押さえつけたり、無駄に牽引したり、無駄に剥離したり、無駄に刺したり切ったりしないということです。

私が台湾のChung Gung記念病院で研修を受けた初日に教えていただいたエピソードを紹介いたします。口腔内の手術で、助手が筋鈎で口唇口角部を牽引するときに渾身の力を使ったため、患者さんの唇が翌日腫れあがってしまった症例写真を見せていただきました。

例えば「イーだ」と口角を指で広げるときに、痛くなるまで引っ張らなくても歯が見えれば十分なんです。当たり前だと思いますが、知らないと思わず引っ張ってしまいます。特にまじめな先生ほどしっかり広げようとして必要以上の力で組織を引っ張ってしまう傾向にあります。

組織を牽引して術野を展開することは必要ですが、無駄に引っ張らないという当たり前のことを実践していくことが理想の手術手技の一歩と考えます。この無駄に力を入れず、必要な力を必要なだけ使うという概念を「必要最低限の力」と私は呼んでいます。

理想的な手術手技に必要な要素としては大きく2つあります。

一つ目は 力の抜き方

二つ目は 力の入れ方

簡単に言ってしまえばこの2つだけです。しかし、これこそが最も難しい要素なのです。少しずつ解説していきたいと思います。

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